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六兆年と一夜物語(オリジナル) No.2 黒色の少年

  • 桜華
  • 2017年8月20日
  • 読了時間: 2分

「誰も知らないおとぎ話は夕焼けの中に吸い込まれて消えてった・・・か」

昔_それほど遠くもない昔、おばあさまが歌ってくれた歌。

私にぴったりだからと何度も歌ってくれた歌。

もう一人、ぴったりな人をみつけました。

歩く。歩く。歩く。。。。

家までの距離が長く感じられる。

ひとつめ、ふたつめの角を右に曲がり、みっつめの角を左に曲がろうとしたとき。

反対側から、何か、気配を感じた。

人々を憎み、世を恨む。

そんな、自分と同じような気配が。

左ではなく、右に足が進む。

行ってはいけないと、そんな気がするのに、勝手に体が動く。

その先には.......少年がいた。

私と真逆の真っ黒な瞳でこちらを睨み、警戒しているようだった。

少年の傷だらけの姿を見ていると、自然と声が出た。

「どうしたの?」

少年は自分にかけられた言葉だと理解すると、目を大きく見開いてからその場に膝を付き、大粒の涙をこぼした。

「ねえ、どうしたの?」

白亜が何度訪ねても少年の涙が頬を伝うだけで、答えは返ってこない。

白亜は、そっと少年の頭を撫でると優しく微笑みかけた。

さっきまで泣いていたその瞳で。

そうすると、少年は泣くのを止め安心したような表情をした。

「a...a........argt. 」

知らない言葉を話す。

「ええと…どうしたらいいのかな?」

困った。

言葉が通じない。

「titkt. bkntkrhkty. anthsmssunkowstirkr.」

そう言うと、私の手を引く。

「待って、私、いけないよ。家に帰らなくちゃ。」

伝わるはずもないのに。

少年は私の手を引き続ける。

仕方がないから、ついていくことにした。

歩いた先には、トンネルのようなものがあった。

どこまで続くか分からない、長い長いトンネルが。

でも、真っ暗ではない。

夜空に星が輝くように、そのトンネルにはたくさんの光が見えた。

行ってはいけない、そう思う自分とこの先の世界を見てみたい、そう思う自分がいた。

でも、私はこの先に行ってははいけない。

そう思ったから、少年の手を振りほどいた。

少年は驚いたように目を見開いたが、私はそのまま駆け出す。

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