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六兆年と一夜物語(オリジナル) No.1 私

  • 桜華
  • 2017年7月16日
  • 読了時間: 2分

「誰も知らないおとぎ話は夕焼けの中に吸い込まれて消えてった・・・か」

昔_それほど遠くもない昔、おばあさまが歌ってくれた歌。

私にぴったりだからと何度も歌ってくれた歌。

もう一人、ぴったりな人をみつけました。

「誰も知らないおとぎ話は夕焼けの中に吸い込まれて消えてった…か」

昔_そう遠くもない昔、私が小さなころ、他とは違う私に何度もおばあさまが歌ってくれた歌。

あまり詳しくは覚えていないけれど、私にはぴったりだとおばあさまは言っていた。

黒い髪、黒い眼、肌色の肌というこの世界に一人、白銀の髪、赤い眼、白い肌の私には溶け込めなかった。

「おうい、白亜、月白白亜。白いお前にはぴったりの名前だな。赤い眼は名前に入っていないみたいだけどな。」

毎日、同じことを言われ、一人ぼっちで過ごす日々。

中学生になれば、知り合いがいなければ、学校が変われば周りの目も変わると思っていた。

しかし、変わったのはこっちを見る目の数ときつさ。

前よりもひどくなった。

いじめはエスカレートし、私は孤立する。

それだけだった。

おばあさま、どうして私の名前は月白白亜なの。

苗字の月白はともかく、なぜ白を重ねた<つきしろはくあ>なんて。

ぴったりな名前だって、いじめられるだけなのに。

少し離れたところで男子の話し声が聞こえる。

「俺の名前って、瓶覗忘じゃん。由来的には色の『瓶覗き』で、すごく薄い藍色なんだって。」

どうでもいい。

「ここからが面白くって、瓶覗きって、『白殺し』ともいわれているんだって。」

話の流れでわかる。

「下の名前も『勿忘草色』に由来してるんだって。これも藍色。<かめのぞきれな>なんて、俺にピッタリなんじゃないかって。白亜をいじめるって意味では。まあ、忘ってのが女っぽくてあれだけど。」

ほら。

男子の笑い声。

私は立ち去ることしかできなかった。

HRも終わり、一刻も早く帰りたいもあり、早足で学校を出る。

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